ワークショップ
2023年3月10日 ITEC総括セミナー「ITECの軌跡と同志社の未来:未来の同志社をデザインする」
2023年3月10日(金)にITECのここまでの活動を振り返る ITEC総括セミナー「ITECの軌跡と同志社の未来:未来の同志社をデザインする」が開催されました。
- 内容
-
開会挨拶・趣旨説明
山本達司 副センター長・商学部教授
第1部. ITECの研究活動の軌跡
「AI時代のビジネスと信頼:フューチャーデザイン」
田口聡志 センター長・商学部教授
第2部. ITECの歴史を振り返り、未来の同志社を考える
歴代のセンター長による鼎談
中田喜文 政策学部教授・前センター長
三好博昭 政策学部教授・前センター長
司会:田口聡志 商学部教授・現センター長
第3部. 総括と今後に向けて
閉会挨拶
澤田雄介 ディレクター・商学部助教(元ITEC院生研究員)
まず第1部では、ITECが進めているAI社会研究、フューチャーデザイン研究の現状が紹介され、続く第2部では、歴代のセンター長が登壇し、ITEC創設時の「野心」などが議論されました。最後に第3部では、ITECの教育への貢献が紹介されるとともに、他大学の先生方も交えて、社会科学が基礎となる学際的研究の今後のあり方が議論されました。
ITECのこれまでの活動を踏まえつつも、今後の同志社の、そして日本の研究の文理融合型研究を進めるうえでの大きなヒントが得られたセミナーとなりました。
2022年8月5日 ITEC勉強会「四半期開示制度に関する実証研究サーベイ」
2022年8月5日にITEC勉強会を開催しました(第56回DEAR(同志社実験研究会)との共催)。今回も、ITEC兼担研究員・大学院生・学外研究者が参加し、活発な議論が交わされました。具体的内容は以下のとおりです。
報告者:中野貴之氏 (法政大学キャリアデザイン学部教授)
報告論題: 四半期開示制度に関する実証研究サーベイ
今回は、ディスクロージャーやIFRS研究が専門で、金融庁金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループで委員を務められた中野貴之氏を講師にお招きし、四半期開示の実証研究についてのご報告をいただきました。
四半期開示制度は、証券市場や経営の短期主義化(short-termism)を促進する恐れがあることや、企業の事務負担を理由として、見直しの議論が進められてきました。特に岸田内閣のもとで重要な政策課題と位置付けられるなど非常に関心が高まっています(その後、2022年12月に金融審議会より見直し案が公表)。報告では冒頭、四半期開示が及ぼす資本市場や企業の投資行動への影響を検証した文献の数は、近年増加していることが示されました。続いて、比較対象として取り挙げられることの多い米国・EUとわが国の制度に関する説明がなされ、各国間で大きな違いがある点に留意する必要があるとの指摘がありました。さらに、最も議論の争点となっている四半期開示が短期主義を促進しているかどうかについては、実証研究からは結論づけることはできないとの指摘がありました(中野 2022a, 2022bも併せて参照)。質疑応答では、制度の詳細や、関連する実証研究についての活発なディスカッションがなされました。
本報告を通じて、社会的に注目される政策にこそ、印象論ではなく経験的証拠に基づく議論が重要であることを再認識しました。同時に、政策形成にかかわる研究サイドはどのようなスタンスであるべきか、改めて考えさせられた次第です。(文責:磯川雄大(ITEC院生研究員))
- 参考文献
-
中野貴之. 2022a. 四半期開示制度に関する実証研究サーベイ. 金融庁金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(第6回) 2月18日. 配布資料3.
中野貴之. 2022b. 四半期開示制度に関する実証研究の証拠. 會計. 202(2): 142-156
2022年6月3日 ITEC勉強会「基準研究×実験の可能性を探る」
2022年6月3日にITEC勉強会を開催しました(第55回DEAR(同志社実験研究会)との共催)。ITEC兼担研究員・大学院生・学外研究者含め総勢12名が参加し、活発な議論が交わされました。具体的内容は以下のとおりです。
報告者:澤井康毅准教授(埼玉大学人文社会科学部)
報告論題: 基準研究×実験の可能性を探る
今回は、会計基準の規範研究が専門の澤井康毅氏を講師に招き、ルール設計のあり方(基準研究)と実験とのコラボレーションの可能性について報告を賜り、意見交換をおこないました。
まず、通常の実証研究では、制度設計後の事後的な検証がメインとなるため、会計基準設定主体が問題とする「ルールのあるべき姿を事前に明らかにすること」については、十分に答えることができません。一方、実験研究によれば、こうした問題をクリアすることができるため、基準研究への貢献可能性があるとされます。そのうえで、澤井氏は、基準の定義変更が、資産・負債の認識に関する個人の意思決定に影響を及ぼすことを示した実験研究(Cade et al. 2019)を紐解きつつ、引当金会計に係る認識・測定の論点に関する考察をおこないました。質疑応答では、基準設定に有用な実証・実験研究はどのようなものなのかについて、活発なディスカッションがおこなわれました。
本報告を通じて、規範レベルの問いについても、実験研究ならではの貢献の余地がありそうだという気づきが得られました。また、望ましいルールのあり方を探求するうえで、多様な方法論によるアプローチが今後、重要になってくると認識しました。(文責:磯川雄大(ITEC院生研究員))
参考文献:Cade, N. L., L. Koonce, and K. I. Mendoza. 2019. “Assets and Liabilities: When Do They Exist?,” Contemporary Accounting Research, 36(2), pp. 553-587.
2021年9月7日 ITEC勉強会「協力ゲーム理論による会計基準の分析―減価償却ゲーム」
2021年9月7日にITEC勉強会を開催しました(第54回DEAR(同志社実験研究会)との共催)。今回も、ITEC兼担研究員・大学院生・学外研究者含め総勢15名が参加する盛会となりました。具体的内容は以下のとおりです。
報告者:荒田映子教授(慶應義塾大学商学部)
報告論題: 協力ゲーム理論による会計基準の分析―減価償却ゲーム
今回は、荒田映子氏を講師に招き、ITECの研究プロジェクトにもつながるゲーム理論を用いた研究として、「協力ゲーム理論による会計基準の分析―減価償却ゲーム」というタイトルで報告を賜りました。
経済の重要インフラともいえる企業会計ルールの中で重要なもののひとつとして、減価償却が挙げられます。減価償却の説明根拠については、古くから様々な議論がなされており、会計の根源的な原則である発生主義や対応原則などがその根拠であるという議論が、会計学の世界でなされています。これに対して、荒田氏の報告は、そのような議論を踏まえつつも、減価償却を協力ゲーム理論で斬るという分析であり、これまでにないドラスティックな視座からの刺激的な内容となりました。質疑応答では、協力ゲームの解概念との関連や、プレイヤーに関する前提について活発な意見交換がなされました。
複雑な経済事象を抽象化してモデルに落とし込み、その本質を議論することは、現在の複雑な社会を捉える上でも非常に重要な視座となります。本報告を踏まえて、我々はそのような視座を感じることができました。今後も、このような勉強会を積み重ねていきたいと思います。
2021年6月25日 ITEC勉強会「Good is too good, bad is too bad: A failure of Bayesian updating.」
2021年6月25日にITEC勉強会を開催しました(第53回DEAR(同志社実験研究会)との共催)。今回も、昨年度の勉強会に引き続き、コロナ禍ということでzoomを用いたオンライン開催となりましたが、ITEC兼担研究員・大学院生・学外研究者含め総勢18名が参加する実り多き会となりました。具体的な内容は以下のとおりです。
報告者:上條良夫教授(早稲田大学政治経済学部、ITEC嘱託研究員)
報告論題: Good is too good, bad is too bad: A failure of Bayesian updating.
今回は、上條良夫氏を講師に招き、ITECの新しい研究プロジェクトの1つである「ベイズ更新と情報開示に関する経済実験プロジェクト」について途中経過報告を行ないました(上條氏・田口聡志氏(商学部教授、ITEC所長)・鶴田まなみ氏(学振PD、ITEC嘱託研究員)の共著)。
人はある情報を得た場合に、事前信念をベイズルールに基づき更新するとされており、このベイズ更新については、古くから多くの理論的・実験的研究が存在します。しかしその多くは、「点情報」(例:「企業の将来の業績は1億円」)に対するベイズ更新を取り扱うもので、現在の不確実性の高い経済社会で注目すべき「範囲情報」(例:「企業の将来の業績は1-3億円の間」。現在、米国の企業会計では、経営者は将来の予想利益を範囲情報として開示します)に対するベイズ更新を取り扱う研究は、意外にも少ないのが現状です。また、他方で、行動経済学においては、人は「上振れ・下振れバイアス」を有する(つまり、自信過剰・過小に陥りがちである)ということも様々な研究から明らかにされており、このようなバイアスの存在とベイズ更新(の成功・失敗)との関係も整理する必要があります。
そこで、本研究が、範囲情報に関するベイズ更新の成功・失敗を、理論的・実験的に取り扱うもので、この夏に予定しているオンライン実験に向けたモデル分析と実験デザインについて報告し、実験へのフィードバックを得る機会となりました。質疑応答では、仮説構築について踏み込んだ提案や、オンライン実験についても活発な意見交換がなされ、最後は、ブレイクアウトルームで各自の感想を共有し合いました。
今年度もコロナ禍となり、対面での勉強会の開催が困難な状況が続きますが、このような中でも、今回のような地道な勉強会を少しずつ積み重ねていくことの重要性を、改めて認識した次第です。
2020年12月10日 ITEC勉強会「社会科学におけるオンライン実験の可能性」
2020年12月10日にITEC勉強会を2部構成で開催しました。今回もコロナ禍ということでzoomを用いたオンライン開催となりましたが、ITEC兼担研究員・大学院生・学外研究者を含め、総勢18名が参加する実り多き会となりました。具体的内容は以下のとおりです。
- 第1部 院生研究員報告会
-
報告者:澤田 雄介氏(大学院商学研究科D3、ITEC院生研究員)
報告論題:「ITEC院生研究員を終えるに当たって」
- 第2部 オンライン実験勉強会
-
報告者:田口 聡志氏(商学部教授、ITEC所長)
澤田 雄介氏(大学院商学研究科D3、ITEC院生研究員)
報告論題:「社会科学におけるオンライン実験の可能性」
2020年8月4日 ITEC勉強会「2040年の同志社大学を『フューチャーデザイン』する」
今回の勉強会はITEC兼担研究員10名が集まり、zoomを用いた初のオンライン開催となりました。
COVID -19を背景に、社会が大きく変わろうとしています。そして、我々含め多くの大学でオンライン講義が展開されるなど、大学のあり方も今後大きく変わっていくことが予想されます。20年後(2040年)の同志社大学は、一体どのような姿になっているのでしょうか。今回の勉強会では、この点に「フューチャーデザイン」でアプローチしました。人間は不確実な未来について判断や意思決定をする際に、近視眼的な思考に陥りがちですが、フューチャーデザインに関するラボ実験やフィールド実験によると、「仮想将来世代」や「仮想将来人」(今の年齢でそのまま将来にタイプスリップする人)を用いることで、意思決定の中身が大きく変わることが示されています。この研究を牽引している西條辰義先生(総合地球環境学研究所特任教授・プログラムディレクター、高知工科大学フューチャーデザイン研究所所長、同志社大学客員教授)・中川善典先生(高知工科大学マネジメント学部准教授)のご協力のもと、実際にフューチャーデザインを被験者として皆で一緒に「体験」しながら、同志社の未来を議論することにしました。
1. 開会の挨拶(山本達司ディレクター)
2. 趣旨説明(田口聡志センター長)
3. 「フューチャーデザイン実験」
・ワークショップ1:プレゼント・デザイン
・ワークショップ2:パスト・デザイン
・ワークショップ3:フューチャー・デザイン
4. 西條辰義先生講演「フューチャーデザイン」
5. 総括
6. 開会の挨拶(瓜生原葉子ディレクター)
山本ディレクター・田口センター長による開会の挨拶と趣旨説明のあと、zoomのブレイクアウトルーム機能を用いて、ITECメンバーが2つのルームに分かれて、合計3つのワークショップ(フューチャーデザイン実験)をおこないました。まずは現代人目線で2040年を考えたのち(ワークショップ1)、将来人になる練習をおこない(ワークショップ2)、最後に仮想将来人になりきって2040年の同志社の未来を考えました(ワークショップ3)。
すべての議論を終えた後に、西條辰義先生に、フューチャーデザインに関する最新の研究についてお話しいただきました。ご講演では、西條先生の研究グループは、ワークショップ形式の討議実験のみならず、自治体等と連携したフューチャーデザインの実践にも積極的に取り組んでおり、さらには、仮想将来人として議論している時の脳の活動状況をf-MRIで解析するなど、神経科学的な分析も進めていることをご披露いただき、今日の実験の「種明かし」をしていただきました。また、それをうけるかたちで、ITECメンバーの感想を共有しました。
最後に、瓜生原ディレクターが、まとめの言葉として、現代人目線での議論においては、現状の批判が議論の中心となった(他人事)のに対して、将来人目線での議論においては、「将来は自分が決めること」(自分事)であり、自分が今行動する大切さを認識できた旨を述べ、4時間に及ぶ勉強会が終了しました。
今回の勉強会は、「フューチャーデザイン」という新しい研究のムーブメントをカギとして、「将来をどのような視点で捉えると、それを自分事として受け止め、かつ切り拓いていけるのか」という実験を皆で体験できた点で、未来志向のITECに相応しい刺激的なイベントとなりました。
2019年8月2日 ITEC勉強会「AI×ヒト:先端技術の社会受容性」
「AI×ヒト:先端技術の社会受容性」を主テーマとして、江間有沙先生(東京大学 未来ビジョン研究センター 特任講師)と本田康二郎先生(金沢医科大学 一般教育機構 准教授 / ITEC共同研究員)をゲスト・スピーカーとしてお招きし、知見を交流しながら、未来社会のあり方をITEC研究者と議論することを狙いに開催しました。
江間先生の講演を基調として、本田先生、田口ディレクターやITEC研究員と「AIと倫理の議論はなぜ噛み合わないのか?」舞台裏トークや、ワークショップ「笑顔の謝罪会見」で知的刺激を高めた後、ITECの文理融合・複合領域の研究テーマとそのアウトプット目標についてグループ・ワークを行いました。
2019年5月27日~28日 ITEC勉強会「人工知能がもたらす経済・社会的影響」
2019年5月27日(月)および28日(火)に、『人工知能の経済学―暮らし・働き方・社会はどう変わるのか―』(ミネルヴァ書房)や『新国富論―新たな経済指標で地方創生』(岩波書店)の編著者として著名な経済学者である馬奈木 俊介先生(九州大学大学院工学研究院教授、九州大学都市研究センター長)をお招きして、ITECとの研究交流会、および研究者を対象としたセミナーを開催しました。
セミナーでは、「人工知能がもたらす経済・社会的影響」というテーマで、AIと人間がどのように共存しうるか、またそこにおけるビジネス・経済の果たす役割について、学内外の研究者・大学院生を交えて活発なディスカッションをおこないました。
今回のような学外の先生方との知的交流を今後も継続していくことで、ITECの大きなミッションのひとつである「AI未来社会のあり方の検討」を推進し、研究・教育面で更に多くの貢献をしていきたいと考えています。
2019年5月5日 ITEC共同研究アイデア交換会
本年1月に行った研究員総会での問題提起を発端に、分野の異なる研究員同士が各々の専門領域の情報を交換して、お互いに知的好奇心を触発し合い、文理融合・学際的な共同研究テーマを見つけ出し、本格的な研究へと育てていこうとする試みの第一歩となりました。
最初は、お互いの研究を5分間のプレゼンテーションで簡潔に紹介し合う「Elevator Pitch」を行い、次に、その内容を受けて、研究分野のできるだけかけ離れた研究員を組み合わせて3つのグループを作り、共同研究テーマを探るブレインストーミングを30分行いました。
最後に、各グループのリーダーが、話題に上がった内容を発表し、その後各自が全体を通したまとめと感想を語り、3時間のアイデア交換会が終了しました。
共同研究テーマの発掘は容易なことではありませんが、可能性を大いに感じる会となりました。今後もこの試みを継続し、学内研究者の知を集結して、横断的な研究テーマへと発展させていたきたいと考えています。
ITECの活動 経済実験 ワークショップ ワーキングペーパー |